猪苗代湖と私


猪苗代湖の自然を守る会
鬼多見 賢

私が生まれて物心がついてから現在までの猪苗代湖とのかかわりについて述べてみたい。世界的に環境保全が叫ばれている中で、猪苗代湖も例外ではない。環境が悪化し、汚染が進行しているのにも関わらず、人の手を加えずにただ見ているのが自然保護なのだろうか。人間の手を加えなければ自然は守れない場合もあるのでは。

そこで、当初はゴミ拾いから初めて絶滅危惧種である「アサザ」の保護活動を実施した。するとある学者から猪苗代湖には生育していなかった種で、鬼多見は別なところから持ち込んで猪苗代湖に移植していると発表されて、移植種と判定し私を非難したのが始まりであった。アサザから始まり、ヨシ刈りやヒシ刈にもクレームがつき、非難され罰せられてきた。

例えば、猪苗代湖の場合、以前は山添に囲まれた場所以外は全て砂浜で、波打ち脇には美しい汀が有った。その汀には波止場が造られ、台所の洗い場として生活用水の一端をなしていた。しかし北岸の砂浜は汚染が進行してその汀どころか砂浜姿を消してしまった。私達やその子供たちが遊んだ砂浜、シジミが生息していた良好な生活環境の姿はどこにいてしまったのだろうか。「おじいちゃん砂浜ってなーに?」と聞かれたら何と答えたらよいのでしょうか。汚い場所では遊べないと子供たちは言う。昔の話に戻りますが、北岸の三城潟の特産品は、「シジミと雀焼」であった。しかし、今ではこの一帯は汚染されヨシや高植物に覆われ、森林化してしまった。漁労どころか湖に近づけない状態になってしまった。

環境悪化が進みヨシが繁茂し、外来樹や高樹木が繁茂してしまったからである。これらを保全しょうとヨシ刈を実施したが、学者や行政から非難を浴び、罰せられてしまった。ヨシは部分的に少し繁茂していた領域を集落ごとにヨシ刈りや野焼きをし、良好なヨシを活用してきた。野焼きをすることによって害虫を防ぎ、雄芽の減少や汚泥等の蓄積を防いできた。しかし野焼きも刈り取りも禁止になってからは森林化が進む一方であった。野焼きは砂浜を戻し、森林化を防ぐ役目をしてきた。更には汚泥等の蓄積によって栄養塩が豊富になり幹は厚膜組織の発達を止め柔らかくなりシミが色付き、害虫は喜んで繁殖して利用価値がなくなった。更には汚泥の蓄積によって湖には生育してはいけないような外来樹「クロバナエンジュ・ニセアカシヤ(トゲエンジュ)」・国内外来種のヤマナラシのような植物の林が沖合100m以上も伸びてきてしまった。砂浜を少し戻した地域もある。小学校の環境教育でヨシ刈をし、少しずつ砂浜が戻り、シジミが生息してきた。これも自然破壊として学者から忠告や非難されてきた。

私が悪いことをするからかと北岸一帯を環境保全地域に指定され「刈る」ことも、「焼く」ことも禁止されてしまった。

野焼きをしたから動植物が減少するとは考えられない。なぜならば野焼きをしてもウサギ等の小動物・知鳥類「キジ・ヤマドリ等」は生息していた。猛禽類も少しは営巣していた。それらの動物に代わって増えてきたのが「アナグマやタヌキ」の棲みかとなってしまった。このまま森林化が進行すれば「クマ」の棲みかになる可能性も考えられる。

以前から汚染状況を測定してきた。1年間に約10㎝ずつ進んでいる。ヨシが根を伸ばし環境状況では1年間に数mも進行していることもある。近年はさらに悪化して汀に少し残された砂地にスカムのような黒物不要物等が流れ着き汚泥となって蓄積している。更に以前は湖では見られなかったタウコギが勢力を増している。タウコギは、近年ほ場で見られる雑草でほ場から種子が流れ込んだと思われる。しかしこの植物もヨシや高樹木の生存競争に負けてやがて林となる。

北岸で見られるヨシ地帯は沿岸では「ヨシ」ではなく「オギ」が勢力を伸ばしてきて次に「カヤ」が見られるようになった。もう湿地帯ではなく陸地になってしまった証拠である。次に「カヤ」が生育し山の土壌になる可能性もある。

また、汚染が進み「ヒシ」が異常繁茂してきた。そこで、ヒシ刈を実施したらまた「猪苗代湖の生育していた植物を刈り取りして、」と学者から非難や忠告を受けた。だが今では行政サイドでは反対に対策を施し、ヨシ刈やヒシ刈を実施している。しかし今でも反対している一部の学者がいる。このようになる前に保全活動をと悔やまれる。癌なら末期癌である。大きな手術が必要だ。そこで自然保護は砂浜を戻すためには思い切った改革が必要であると考えられる。1000年も2000年も前からこのような状況で有ったなら別だが、私たちの子供が遊んだ砂浜を戻すためには、ヨシ谷地になってしまったところに繁茂している外来樹や柳等を取り除き、汚泥の蓄積を防がなければならない。そこには道徳と法は反比例するように大きな壁が立ちふさがっている。砂浜に近年繁茂してきた樹木も取り除かなければならない。実際に行っている地域もある。ヨシや雑草が生えればトラックターで耕起し、外来樹を伐採している。

猪苗代湖のpH値上昇は見逃せないところである。pHの上昇はこれら北岸に問題ある可能性が大きい。

このままでは環境は良くなるどころか、悪くなる可能性がある。少しでも悪化を最小限にしようと、環境教育に取り組み清掃・アサザの保護・ヨシ刈・ヒシ刈を実施し、環境保全意識を参加者に高めていただくために今までのように「猪苗代湖の自然を守る会」の方々と共に努力したい。

また、近年ヨシを刈ることになった。しかし私の考えとは正反対の「毎年別なところを刈れ。」「水辺は刈るな。」「虎狩りにしろ。」と学者は指導して来た。毎年別な所を刈ることによって、鳥類の住み家を脅かすばかりか動物の住み家も脅かしている。鳥類ではキジ・ヤマドリが居なくなってきた。更には猛禽類の巣が減り、兎の姿が見られなくなってしまった。ヨシ刈りを同じ場所継続することによって鳥類や動物は住み家を移動して営巣する。衣食住が破壊されたところでは営巣しない。更に、ヨシは毎年別な所を刈っても何の意味も持たない。集中治療をすることによって効果が現れる。翁島小学校の環境教育で同じ場所を刈っていたら砂浜が戻ってきた。これからは以前のような砂浜の回復が環境保全につながり、おのずと水質や大腸菌群数値が下がることだと信じている。

最後に多くの方々のご協力とご批判をお待ちしております。